この作品集に収録されている中編”Die Energie 5.2☆11.8”を紹介したい。
タイトルの5.2、11.8という数値は70年代の発電エネルギー効率、つまり5.2の電力エネルギーを得るのに17のエネルギーを投入する必要がある。11.8はエネルギーロスとなることに由来している。
ストーリーは、主人公である電力会社の社員ルドルフ・ロッシュが低濃縮ウラン盗難を発端とする原発テロ事件に巻き込まれるというもの。
大量の電気を消費し続けながら原発を批判する者、原発に依って被爆する者、原発批判により利益喪失する者、我がままな消費者に翻弄され報復を試みる者。主人公の周りには様々な立場の人間があらわれる。そしてその誰もが受益者でありながら、なお被害者意識を捨てられない者たちだ。
ページ当たりの文字数が小説に匹敵する程の大量のネームと強い社会性に裏打ちされた本作品は1982年「LaLa(ララ)」(白泉社発行)6〜8月号に掲載された。
余談ではあるが、このような社会性の強いテーマの作品が20年前の少女マンガ雑誌に掲載されていたということが、当時の少女マンガ雑誌のポジションとその後の変遷を語る上で重要であると考えられる。
さらに余談ではあるが、当時店主は工学系大学に在学しており、その頃のソフトウェア工学系研究室のワークステーションの脇には、この雑誌「ララ」が標準装備されているのが常識であった。
さらにさらに余談ではあるが、本作品の続編ともいえる1985年発行の「X−DAY」(白泉社発行)もお薦めである。
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