マイナーなものに走るお勧めコーナーですが、今回もマイナーです。
先日ある女性に遠藤政治『花びらの唄』のこの絵を見せたところ、”この作者は、とてもいい人に違いない”という感想を述べた。
個人的に遠藤政治氏と面識があるわけでもないし、基本的に作品と作者の人格というのは別物だと考えてはいるのですが、それでも絵に人柄が現れると云うことはあるのだと思います。
『幽霊船』は、江戸寛永の頃、幕府の御用船まぼろし丸が、32梱の黄金と共に行方不明になるというミステリー仕立ての時代劇である。父の汚名を晴らそうとするまぼろし丸の船長徳兵エの息子雲太郎、消えたまぼろし丸を追う幕府の隠密椎名又七郎、犬にしか心を許さない隻眼の浪人筑波左近。ともすればおどろおどろしい設定に流されそうな筋立てが、遠藤政治の軽妙なキャラクタにより、良好なバランスを保っている作品といえる。
絵柄に関しては初期の遠藤に比較すると荒れた印象も受けるが、大コマにおける構図、空間感覚に関しては相変わらずというよりさらに絶妙さが伺える。
所々にキャラクタの絵柄が変わるのは、おそらく複数の作家の手伝いによるものだと思われる。水木しげるの元アシスタントにして、某伝説の古書店の店長Y氏によれば、つげ義春、遠藤信一の手伝いが入っている可能性が指摘されている。
遠藤政治は、その後アニメ業界へと転向した。アニメにおける代表作には、『あらいぐまラスカル』や『山ネズミロッキーチャック』などがある。遠藤政治はやっぱり”いい人柄”なのだと思う。
A5サイズ、ソフトカバー、小口少ヤケ、カバー背下部にイタミ。
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